じっくりクラスの作文発表
大野節子
夫が亡くなった後、しばらくして遠友塾から電話がありました。そして「じっくりクラス」の話を聞きました。一人一人の能力や希望に合わせて授業をしてくれるそうです。私は一人では毎日淋しいし、まだまだ学ぶことがあるのではと考え、もう一度遠友塾に通い始めました。
先生の1人が私に何をしたいかと尋ねました。私は自分が歩んできた人生を書いてみたい、子供たちや孫たちに忙しさに追われ何も話していないので書き残したい、文章を書くのも初めて、日本語もひらがな、カタカナがやっと、漢字はほんの少し。無理かもしれない。すると先生はそのために私たちがいると言ってくれました。少しずつ、時には週に原稿用紙10枚、20枚、平成19年から足かけ6年、入院中も原稿用紙、鉛筆、消しゴムを持ち込み書き続けてきました。
書いていくと苦しいこと、悲しいことだけでなく、楽しかったこと、嬉しかったこと、人の優しさに涙した日々を思い出すことが出来ました。必死で生きてきた人生を振り返ることで、自分の人生に誇りを持つことが出来ました。自分の言葉で語ることが恐ろしくなくなりました。そして、これまで多くの人が私を励まし勇気を与えてくれていることに気づきました。
ある日、遠友塾でこの長い話の最初の一部を読む機会がありました。人前で自分の文章を読むことは生まれて初めて。とても緊張しました。のどがカラカラ、心臓はドキドキ。何度も練習してやっとでした。読んでいくうちに、私の声がみんなの心に届いていくような気がしました。終わると今まで経験したことのなかった盛大な拍手と歓声の嵐。
それから私の人生が大きく変わりました。自分に自信がつき、周りにも笑顔でこたえることが出来ました。馬鹿にされないかとビクビクした自分が積極的になったのです。自由にのびのびと自分の気持ちを話すようになったのです。そんな私を見て周りの人々の対応も変わってきました。字が書けない、字が読めないと私を馬鹿にしていた人たちが、遠友塾の私の話を聞いて「すごい、すばらしい。」と。
書くことで一番変わったのは私自身。自分の人生をもう一度見直すことになりました。今、これまでしっかりと生きてきた自分をほめてやりたい気持ちで一杯です。
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