全国夜間中学校研究大会
第53回全国夜間中学校研究大会 参加報告
2007年度
参加者感想
大会に参加した全体感想
1年英語科スタッフ 横関 理恵
第53回夜間中学全国大会に参加した感想として、ここで、私は、広島市立二葉中学夜間中学の訪問について述べたいと思う。
広島市立二葉中学校夜間学級は、中国語を話す生徒が多い。職員の話しによると、歴史的文脈の中で、広島から、多くの人が、満州へ渡った経緯があり、その子孫が広島の地に戻り生活しているそうである。ここで学ぶ生徒の多くは、現在、非正規雇用につきながら、夜間学級へ学びにきているとの話だった。
学校の様子は、生徒の名前のついた靴箱があり、夜間学級のための教室があり、生徒は自分の机で学んでいた。給食や修学旅行や遠足もある。
今回の参観授業は日本語と社会であった。教室に入った時、すぐ目についたのは、黒板の隣にあった教育目標であった。
一.人権を尊重し、差別を許さず、平和を守り胸を張って生き抜く生徒になる。
一.自ら学び考え仲間ともに磨き合い高まりあって進む生徒になる。
一.勤労を愛し、豊かな想像力と健全な身体を持った生徒になる。
教育目標に向かって、ひたむきに勉強している生徒さんの姿は、言葉にできない経験を背負い、日本でたくましく生きているのだなと私に感じさせた。
日本語クラスは、習熟度別に分かれ、少人数制で、決め細やかな指導をしていた。教室の後ろにベビーベットがあり、3歳くらいの子供が、母親の学ぶ姿を見ていた。「はし」の発音を繰り返して練習し、「箸」と「橋」の区別の発音練習を行っていた。ベビーベットにいる子どもが、その発音を真似て、先生や生徒や参観者の笑い声が教室の中に広がった。
日本語文法のクラスは、「しゃっきん(借金)をしません」という否定文の練習をしていた。生徒さんは、先生の面白い説明を聞きながら、繰り返し発音していた。
社会のクラスでは、朝青龍の写真からチンギスハンを連想させるように、生徒の意見をうまく引き出すような工夫がされていて、日本語と中国語が飛び交い楽しそうな授業であった。
交流会では、中国の切り絵が飾られた部屋で、中国民謡「まつり花」を歌ってもてなしてくれた。意見交換会で、「なぜ、日本にきましたか?将来の夢をきかせてください」との質問に、ある中国語を母国語にもつ女性は、ゆっくりとした日本語で「にほんはきれいなくに。やさしいひとがたくさんいるから、きました。しょうらいは、にほんではたらいて、しあわせにすみたい」と答えてくれたのが印象的であった。
今回の広島市立二葉中学校夜間学級の見学は、マイノリティや社会的排除に見舞われた人に対して、日本国憲法に基づく学習権保障や国による義務教育制度の条件整備責務などの観点から、さまざまなことを考えさせられた。周知のとおり、現在、札幌に公立夜間中学がなく、
札幌遠友塾自主夜間中学がボランティア達の支援によって、学習権保障を具体化している。当然、教育制度の条件整備は決して十分だとはいえない。今後、不登校・引きこもり、同様、人口減少に伴い外国人労働者の受け入れなどに伴うニューカマーの子どもたちの教育の問題は、「まったなし」の社会的問題として表出してくることが予想される。札幌遠友塾の授業を、学校という場所で実現できるように、ささやかではあるが協力してゆきたいと思った。
▲授業風景
▲広島二葉中との交流
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