札幌遠友塾自主夜間中学 20年の集い
生活体験発表
酒井 順子 さん(3年クラス)
みなさん、こんばんは。私は遠友塾で学んで5年目です。16期生で、再履修で2年学ばせて頂いています。
1年生の時は教室でテレビ局の人達に写真を写されるのもいやでした。2年生頃からだんだん慣れてきて気にならなくなりました。学ぶことによって、人は変わっていくのだと思いました。学んで5年目、遠友塾20周年、この記念する時にあたり、私は今まで心の中に封印していた過去を開こうと思い、全国夜間中学研究会で心の封印を開き、発表を致しました。東京で発表したことを発表致します。
− 遠友塾との出会いに感謝 −
私は昭和18(1943)年生まれです。就学期の時、自分が思うように学習できませんでした。理由は小学校2年生の時父が倒れて入院したが、思わしくなく、市立病院に転院しました。私が学校から帰って来た時、母に、明日から働かないとお金がなく、生活ができないと言われました。生後3ヶ月の妹の子守りを母から頼まれ、子供ごころにも「助けてあげたい」と思いました。知り合いの世話で、農家の田植えに行くことになり、翌日から母は働き、私は妹をおんぶし、1ヵ月学校を子守のために休みました。1ヶ月後学校に登校したが、勉強が進んで分からないことが沢山ありました。先生から休んだことを叱られ、悲しい日々でした。
その後父は元気になりましたが、母は無理がたたり、私が4年生の時病気になり入院。2歳の妹を連れて学校に行きましたが、おなかがすいたと泣き、家に帰りたいと泣き、先生から「かわいそうだから帰りなさい」と言われ、家に1時間がかりで帰って来ました。家事の仕事、子守、母の見舞い、毎日大変で、勉強する時間はありませんでした。ともに苦しい生活を頑張った妹は翌年病気で急死しました。3歳3ヶ月の短い命でしたが、今も私の心の中で生きています。4年生の担任の先生は、熱心な教育者で、家の事情を理解していただき、日曜日の日、遅れている勉強を先生の家で教えて頂きました。先生は私の人生の恩人です。中学生の時私が病気になってしまい、そんなわけでいつか機会があれば、基礎学習から学びたいと希望を持ち続けていました。
私に生涯忘れられない日が来ました。1990年3月25日朝、北海道新聞を見ましたら、札幌に自主夜間中学校が開校されるという記事がありました。明治27(1894)年に、新渡戸稲造が札幌に、貧困家庭子弟教育のために設立した「遠友夜間学校」の教育精神を受け継ぎ、「遠友塾」と名付けたこと、また遠友塾は、学ぶ意欲のある人なら年齢を問わず誰でも受け入れると書いてありました。私は喜びで胸がいっぱいになり、目の前が光り輝くようでした。家庭の事情ですぐ学ぶことができず、定年退職後、「遠友塾」の門をたたくことができました。夢がかなって、勉強することが出来て、感激で言葉にい表すことが出来ないほど、幸福な毎日です。学ぶことが、生きる喜び、活力になり、私なりに人生の目標ができました。私は遠友塾で学んで5年目になります。学びの証として、朗読奉仕会で週1回朗読をさせて頂いております。持病の網膜剥離がありますが、視力のある限り、人として、生涯学び続けていこうと思います。
遠友塾との出会いは私の人生の宝物です。今年遠友塾は20周年を迎えました。私もその歴史の歩みの中で学ぶ幸せと、喜びを頂きました。先生方お一人お一人に、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
この文を東京で発表致しました。全国大会に出席して、多くの人たちとの出会いから、人として大切なものを学ぶことが出来ました。私自身これからの生き方を再認識しました。このような体験の場を与えて頂き感謝を申し上げます。
今日のお祝いにひとことご挨拶させていただきます。遠友塾20周年おめでとうございます。諸先生方のご苦労とご努力で誕生した遠友塾は、多くの人に光を与えて下さいました。教育未履修者、また再教育者、沢山の人が学ぶ機会が与えられ、希望に満ちた生活が出来るようになったと思います。私もその一人です。学ぶことは生きる力、喜びです。学びのおかげで人の絆も貴さも学びました。先日私と同じ5年目のクラスメートの「細岡のぶ」さんのピアノコンサートにお誘いを受けて行ってまいりました。ランゲの「花の歌」を弾くお姿は大変感動致しました。細岡さんは重い病気を患い、後遺症もあるそうですが、勉強とピアノを頑張っているお姿は、頭が下がります。感謝の言葉で、私は命のある限りピアノを弾いて下さいと言いました。私の周りには目標とする人たちが沢山います。遠友塾との出会いで、多くの友ができました。人の絆を大切に、命のある限り学び続けていこうと思います。
遠友塾の灯が今日から30年へと、50年そして1世紀と燃え続けますよう願い、希望の種をまき続けて下さい。先生方、スタッフの皆様、向陵中学校の先生方お一人お一人に心から感謝を申し上げます。
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