札幌遠友塾自主夜間中学 20年の集い
代表あいさつ
工藤 慶一 さん
みなさんこんばんは。この言葉から始めないと調子が出ないです。私たちは、いつも「こんばんは。お晩でございます」という挨拶から始まりますね。
今日は連休にも関わらず、このように多くの方に「遠友塾20年の集い」におこしをいただきまして、ありがとうございます。
札幌遠友塾は1987年(昭和62年)、一昨年お亡くなりになりました牧野金太郎先生が、戦前に50年続いた遠友夜学校という学校の記録を見て「学ぶことが、生きることの証と喜びになる学校、そのような学校を作りたい」という思いから、遠友塾読書会を作ったのが始まりです。牧野先生が遠友塾という名前をつけて下さったのです。
そうして1990年から授業が始まったわけです。そうして5年たち、10年たち、11年から12年目頃にある問題が起きてきました。新聞に、当時教室場所としていた札幌市民会館が5年後に閉鎖するという記事が載っていました。もうすでに、その当時遠友塾は生徒さん、スタッフ合わせて150人規模の大きな所帯になっていましたので、おいそれと小回りが利かず、どこに次の場所を求めるかという問題がでてきました。それで5年前の15周年の時に私は、皆様に「これから新たな教室場所を求めて、いろいろやっていかなければいけない、とてつもなく、大きな困難に立ち向かっていかなければならない」というお話をしました。
5年たった今、遠友塾は市民会館17年、今日のつどいの場所である教育文化会館2年の時代をへて、今年の春から札幌市立向陵中学校で、安心して授業を行えるようになりました。あわせて施設の使用料が大幅に下がった、下げていただいた。おかげで、1期生から今年卒業された17期生まで283名の方が毎月1,500円の授業料をお支払いいただいていたのですが、それを1,000円に下げることができたのです。今年の3月までの卒業生の方には、誠に申し訳ないのですが、でもやはり、嬉しいですね。
こうしたことが可能になったのは、多くの方々のお力添えをいただいたおかげです。札幌市の上田市長、北原教育長、そして歴代札幌市教育委員会の職員の方々に暖かいご配慮をいただきました。また、私たちを心よくお迎えくださいました、札幌市立向陵中学校の前校長の佐藤先生、それから現校長の今日来ていただいております植村校長先生、さらに小原教頭先生をはじめ教職員の皆様、向陵中学校のPTAと町内会の皆様、そして生徒の皆様に心よりお礼を申しあげます。
また、全国の賛助会員の皆様、北海道議会・札幌市議会全政党の議員の方々、札幌弁護士会の方々、北海道教職員組合ならびに札幌市教職員組合の方々、授業プリントの無料コピーサービスをしていただいている富士ゼロックス北海道株式会社の皆様など、数多くの方たちのご支援に感謝します。この日を迎えることができた喜びを、私たち札幌遠友塾関係者だけではなく、この間ご支援をして下さいました全国の夜間中学の仲間たちとともに分かち合いたいと思います。
また、本日は旭川、函館、釧路の自主夜間中学の皆様にもお越しいただいております。確実に北海道に夜間中学の人の輪が広がっており、今まさに交流が始まろうとしています。
こうした中にあって、札幌遠友塾は、受講生の方々の切なる要望である「もっとゆっくり授業を進めてほしい」「社会科も増やしてほしい」「理科の授業も受けたい」等々の要望にこたえるため、さらに授業内容の充実と時間数の増加を、いろいろな方々の協力のもとに、めざしていきたいと考えています。遠友塾が存在する意義は、おそらくこれからも消えることはなく、ますますその役割は大きくなっていくのではないかと思います。
さらに全道に自主夜間中学がますます増えていくことでしょう。こうした中にあって、将来を見据えながら、代表を含むスタッフの世代交代を視野に入れながら、もう二度と様々な理由で学校に行けなかった人たちの悲しみを見ることのない世の中をめざして、これからも少しずつできるところからやっていきたいと思います。
本日はこれまでの5年、10年、15年の集いのように、懇親のみのあつまりではなく、初めて受講生、学習者の生活体験発表があります。「なぜ夜間中学で学ぼうと思いたったか?」「学んでみてどうだったのか?」「そして卒業した方は今どうしているのか?」などを、私たちの記録として残し、学ぶことの大切さ、人と人との出会いの素晴らしさを若い世代に伝えるとともに、もっと多くの人たちに遠友塾のような学び舎があることを知っていただく契機にしたいと思います。今日お話ししてくれる方々は、このために勇気を奮いおこしてくださいました。
終りになりますが、1期生入学当時のスタッフであったお二人のスタッフが40代半ばでガンに罹ってお亡くなりになりました。その方のお名前は、今紺映一さん、江良富士男さんです。まだ他にもいるのですが、このお二人は40代半ばで遠友塾とともにありたいという気持ちを持ちつつ、お亡くなりになりました。今紺先生と江良さんが、今この場を天国から見たら、どう思われるでしょうか。共にこの日を迎えたかったという思いと、これからも私たちを暖かく見守ってほしいという気持ちでいっぱいです。
ご清聴ありがとうございました。
<< もどる